HOME 言葉の意味 「論陣を張る」or「論戦を張る」? 「論陣を張る」or「論戦を張る」? 「論陣」or「論戦」? (ページ下部にオマケ漫画があります) (結論) 「理論を組み立てて議論を展開すること」は「論陣を張る」 「論戦を張る」は誤り! 「論〇を張る」 「賛成と反対の立場に分かれ、それぞれ論〇を張ってディベートを行った」 この例文の、〇に入る漢字が何だか分かりますか? 「論〇」の形の熟語は多数存在しますが、「論〇を張って」という形になると、おそらく「論陣」か「論戦」を思い浮かべるのではないでしょうか。 「論陣」が思い浮かんだ方は、大正解! 「論戦を張る」だと思ってしまった方は、ぜひ後々紹介する覚え方で、正しい言葉を覚えてみてください。 まずは、「論陣を張る」の正しい意味から、おさえていきましょう。 論陣(ろんじん)を張(は)・る 論理を組み立てて議論を展開する。「教授陣を相手に堂々と―・る」 デジタル大辞泉(小学館) goo辞書より引用 「論陣を張る」とは、「理論を組み立てて議論を展開する」こと。 より分かりやすいように、「論陣」と「張る」の、二つのワードに分けて考えてみましょう。 「論陣」とは、その字の通り、「論の陣」です。 「陣」とは、本来は、戦いの場において軍隊が集まる場所、という意味で使われる言葉です。 子どもの頃に、「じんとり」という鬼ごっこに似た遊びをした記憶はありませんか? 二チームに分かれ、相手が守っているエリアに触れることができたら勝ち、というゲームです。 この「じんとり」の「じん」が「陣」であり、いかに相手に攻められないようにするか、策を練って構えておく場所、と理解することができるでしょう。 つまり、「論陣」とは、議論の場において、相手の論に対応するため、自分の意見をよく練り、説得力のある論を組み立てることなのです。 ろん‐じん〔‐ヂン〕【論陣】 議論や弁論をするときの論の組み立て。「論陣を張る」 デジタル大辞泉(小学館) goo辞書より引用 そして「張る」には、テントをのばし広げる、などといったよく使われる意味のほかに、「構える、整える」という意味もあります。 「論陣を張る」の「張る」は後者の意味で使われています。 ですから、「論陣を張る」とは、説得力のある論理を組み立て議論を構える、という意味になるのです。 ここで、簡単に覚え方を紹介します。 「論陣を張る」を、「論」の「陣を張る」、と分けて考えましょう。 先程紹介した「陣」の意味で、「陣を張る」という言い方がされますが、「論陣を張る」は、言論によって「陣を張る」ことです。 「戦(いくさ)を張る」と表現することはありません。 「陣」と「張る」を関連づけて覚えておけば、きっと「論陣を張る」と正しく使えるようになりますよ! 誤用率、さらに高まる 文化庁が、平成19年と平成30年に16歳以上を対象に行った「国語に関する世論調査」で、「論陣を張る」と「論戦を張る」のどちらを使うか、についての調査が行われました。 まずは、正しい「論陣を張る」の使用率推移に触れていきます。 平成19年では、10代から70代以上の全ての年代において、二割から三割の人が正しく使えており、最も高い数値は60代の30.0%でした。 平成30年では、50代、60代を除いた他の年代において、正答率が上昇していました。 50代、60代の正答率の低下についてはこのように考えることができます。 約10年後に再び調査されたわけですから、40代だった人が50代になり、50代だった人が60代になり……と考えて数値を追えば、40代から60代に限っては、10年間の間に正しく使えるようになった、というわけではなさそうです。 それでも、10代から40代では、10%近く正答率が上がっている年代もあり、全年代をみると、正答率は24.7%から30.3%と上昇しています。 一見すると、正答率があがっているから、いい結果なのでは?と思うかもしれません。 ですが、誤用率はもっと高いのです。 平成19年の誤用率は、どの年代も三割程度で、10代の26.3%が最も低く、20代の43.5%が最も高い誤用率を示す結果となりました。 平成30年の誤用率は、10代以外の全ての年代で四割から五割の誤用率となり、10代の27.1%が最も低く、50代の50.8%が最も高い数値となりました。 全年代をみると、誤用率は34.9%から42%と上昇しており、正答率の増加率よりも高い増加率となりました。 つまり、10年間の間で、さらに「論戦を張る」という誤った使い方が広まってしまったわけです。 SNSの普及などにより、他人の誤った使い方を、知らず知らずのうちに目にすることが多くなっているのでしょうか。 誤用する人が増えている原因は定かではありませんが、この機会に、「論陣を張る」という正しい言葉を、ぜひ覚えていってくださいね。 「論陣」の他に、「何」を「張る」? 「論陣を張る」が正しく、「論戦を張る」は誤りである、とお伝えしましたが、「論戦」という言葉があるのは確かです。 「論戦」は、「互いに議論をたたかわせること」という意味で、「論戦を繰り広げる」や「論戦する」などのように使われます。 また、「論陣を張る」は、言論によって「陣を張る」だ、とお伝えしました。 同様に、文章によって「陣を張る」ことを表す言葉も存在します。 それが、「筆陣を張る」。 文字通りで分かりやすいですよね。 また、形だけ「論陣を張る」に似た言葉もあります。 「煙幕を張る」という言葉は、「相手に真意を悟らせないために、ごまかしたり、あいまいな言い方をしたりする(goo辞書より引用)」という意味をもちます。 また、「我(が)を張る」という言葉は、「自分の考えを押し通して譲らない(goo辞書より引用)」という意味をもちます。 他に、「体を張る」という言葉は、「命懸けで事に当たる(goo辞書より引用)」という意味をもちます。 「○○を張る」という形の言葉は、他にもいくつかあるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。 もちろんですが、上で紹介した「煙幕を張る」や「我を張る」は、「論陣を張る」とは全く異なる意味ですので注意してくださいね!
(結論)
「理論を組み立てて議論を展開すること」は「論陣を張る」
「論戦を張る」は誤り!
「論〇を張る」
「賛成と反対の立場に分かれ、それぞれ論〇を張ってディベートを行った」
この例文の、〇に入る漢字が何だか分かりますか?
「論〇」の形の熟語は多数存在しますが、「論〇を張って」という形になると、おそらく「論陣」か「論戦」を思い浮かべるのではないでしょうか。
「論陣」が思い浮かんだ方は、大正解!
「論戦を張る」だと思ってしまった方は、ぜひ後々紹介する覚え方で、正しい言葉を覚えてみてください。
まずは、「論陣を張る」の正しい意味から、おさえていきましょう。
goo辞書より引用
「論陣を張る」とは、「理論を組み立てて議論を展開する」こと。
より分かりやすいように、「論陣」と「張る」の、二つのワードに分けて考えてみましょう。
「論陣」とは、その字の通り、「論の陣」です。
「陣」とは、本来は、戦いの場において軍隊が集まる場所、という意味で使われる言葉です。
子どもの頃に、「じんとり」という鬼ごっこに似た遊びをした記憶はありませんか?
二チームに分かれ、相手が守っているエリアに触れることができたら勝ち、というゲームです。
この「じんとり」の「じん」が「陣」であり、いかに相手に攻められないようにするか、策を練って構えておく場所、と理解することができるでしょう。
つまり、「論陣」とは、議論の場において、相手の論に対応するため、自分の意見をよく練り、説得力のある論を組み立てることなのです。
goo辞書より引用
そして「張る」には、テントをのばし広げる、などといったよく使われる意味のほかに、「構える、整える」という意味もあります。
「論陣を張る」の「張る」は後者の意味で使われています。
ですから、「論陣を張る」とは、説得力のある論理を組み立て議論を構える、という意味になるのです。
ここで、簡単に覚え方を紹介します。
「論陣を張る」を、「論」の「陣を張る」、と分けて考えましょう。
先程紹介した「陣」の意味で、「陣を張る」という言い方がされますが、「論陣を張る」は、言論によって「陣を張る」ことです。
「戦(いくさ)を張る」と表現することはありません。
「陣」と「張る」を関連づけて覚えておけば、きっと「論陣を張る」と正しく使えるようになりますよ!
誤用率、さらに高まる
文化庁が、平成19年と平成30年に16歳以上を対象に行った「国語に関する世論調査」で、「論陣を張る」と「論戦を張る」のどちらを使うか、についての調査が行われました。
まずは、正しい「論陣を張る」の使用率推移に触れていきます。
平成19年では、10代から70代以上の全ての年代において、二割から三割の人が正しく使えており、最も高い数値は60代の30.0%でした。
平成30年では、50代、60代を除いた他の年代において、正答率が上昇していました。
50代、60代の正答率の低下についてはこのように考えることができます。
約10年後に再び調査されたわけですから、40代だった人が50代になり、50代だった人が60代になり……と考えて数値を追えば、40代から60代に限っては、10年間の間に正しく使えるようになった、というわけではなさそうです。
それでも、10代から40代では、10%近く正答率が上がっている年代もあり、全年代をみると、正答率は24.7%から30.3%と上昇しています。
一見すると、正答率があがっているから、いい結果なのでは?と思うかもしれません。
ですが、誤用率はもっと高いのです。
平成19年の誤用率は、どの年代も三割程度で、10代の26.3%が最も低く、20代の43.5%が最も高い誤用率を示す結果となりました。
平成30年の誤用率は、10代以外の全ての年代で四割から五割の誤用率となり、10代の27.1%が最も低く、50代の50.8%が最も高い数値となりました。
全年代をみると、誤用率は34.9%から42%と上昇しており、正答率の増加率よりも高い増加率となりました。
つまり、10年間の間で、さらに「論戦を張る」という誤った使い方が広まってしまったわけです。
SNSの普及などにより、他人の誤った使い方を、知らず知らずのうちに目にすることが多くなっているのでしょうか。
誤用する人が増えている原因は定かではありませんが、この機会に、「論陣を張る」という正しい言葉を、ぜひ覚えていってくださいね。
「論陣」の他に、「何」を「張る」?
「論陣を張る」が正しく、「論戦を張る」は誤りである、とお伝えしましたが、「論戦」という言葉があるのは確かです。
「論戦」は、「互いに議論をたたかわせること」という意味で、「論戦を繰り広げる」や「論戦する」などのように使われます。
また、「論陣を張る」は、言論によって「陣を張る」だ、とお伝えしました。
同様に、文章によって「陣を張る」ことを表す言葉も存在します。
それが、「筆陣を張る」。
文字通りで分かりやすいですよね。
また、形だけ「論陣を張る」に似た言葉もあります。
「煙幕を張る」という言葉は、「相手に真意を悟らせないために、ごまかしたり、あいまいな言い方をしたりする(goo辞書より引用)」という意味をもちます。
また、「我(が)を張る」という言葉は、「自分の考えを押し通して譲らない(goo辞書より引用)」という意味をもちます。
他に、「体を張る」という言葉は、「命懸けで事に当たる(goo辞書より引用)」という意味をもちます。
「○○を張る」という形の言葉は、他にもいくつかあるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
もちろんですが、上で紹介した「煙幕を張る」や「我を張る」は、「論陣を張る」とは全く異なる意味ですので注意してくださいね!