溜飲を「下げる」or「晴らす」?

「下げる」か「晴らす」か?

溜飲を「下げる」or「晴らす」? オマケ漫画あります

(ページ下部にオマケ漫画があります)

(結論)

「胸のつかえがなくなり、気が晴れること」は「溜飲を下げる」

「溜飲を晴らす」は誤り!

「溜飲」は、「下げる」もの!

「何時間にも及ぶ話し合いの末、やっと溜飲を晴らすことができた」

この例文の中から、間違いを見つけることはできますか?

何かわだかまりを抱えており、それを解決するために話し合いに臨んだ結果、無事胸のつかえを取り去ることができた、という状況です。

間違いは、「溜飲を晴らす」の部分!

正しくは、「溜飲を下げる」です。

動詞を取り違えることによって誤用される言葉というのは、多々あります。

「溜飲を下げる」も、そのひとつ。

その意味や由来を根本から理解すれば、きっと誤用しなくなります!

まずは、意味から確認していきましょう。

溜飲(りゅういん)を下(さ)・げる

胸をすっきりさせる。不平・不満・恨みなどを解消して、気を晴らす。「相手を論破して―・げる」

デジタル大辞泉(小学館)

goo辞書より引用

「溜飲を下げる」とは、不平や不満などを解消して、胸をすっきりさせること。

いまいち、「溜飲を下げる」の字面とその意味が結びつかない、と思う方もいるかもしれません。

そんな方は、「溜飲」の意味から考えてみましょう。

「溜飲」とは、本来は、「飲食物が胃にとどこおって、酸性の胃液がのどに上がってくること(goo辞書より引用)」を指します。

バイキングなんかで食べ過ぎたときに、食べ物を飲み込んでも胸につかえている感じがして、すっぱい胃液が胃から逆流してくるような感覚に見舞われた経験、ありませんか?

このように、胃液が上がってくることによって感じる不快感、さらに不平や不満などを、まとめて「溜飲」という言葉で比喩的に表現したのが、「留飲を下げる」の由来です。

「溜飲」すなわち、上がってきた胃液を、胃に戻し「下げる」ことですっきりすることができるから、「溜飲を下げる」となるのです。

上がってきた胃液を、胃へ向かって「晴らす」というのでは、意味が通じません。

ここで紹介した由来を関連付けることができれば、きっと「溜飲を下げる」と正しく覚えられるはずです!

ちなみに、「溜飲」は「留飲」とも表記することができ、同様の意味で用いられます。

言い換え表現に注意?

「溜飲を下げる」という言葉は、不平や不満などを解消して、胸をすっきりさせる、という意味です。

気分をすっきりさせる、という意味をもつ言葉は数多くあり、「溜飲を下げる」は、様々な言葉で言い換えることが可能です。

例えば、「気を晴らす」や「憂(う)さを晴らす」、「鬱憤(うっぷん)を晴らす」などがあります。

ですが、このような言い換え表現と「溜飲を下げる」を混同してしまわないように注意が必要です!

「晴らす」には、「心のわだかまりを取り除いてはればれとした気持ちにさせる(goo辞書より引用)」という意味があります。

「晴らす」という言葉自体に「溜飲を下げる」と同様の意味が含まれるため、言い換え表現として用いられることが多くなります。

ですが、それゆえに混同してしまって、「溜飲を晴らす」と誤用しないように!

先程紹介した由来と共に、「溜飲を下げる」という正しい形で覚えてくださいね。

誤用率、さらに高まる

文化庁が、平成19年と平成29年に16歳以上を対象に行った「国語に関する世論調査」で、「溜飲を下げる」と「溜飲を晴らす」のどちらを使うかについての調査が行われました。

まずは、正しい「溜飲を下げる」の使用率推移について触れていきます。

平成19年の正答率は、10代以外は約四割程度となっており、10代は最も低く20.0%、最も高いのは70代以上の45.9%でした。

平成29年の正答率は、19年と比べて、全ての年代において、数%の低下あるいは不変という結果になりました。

全年代の正答率の平均は、37.4%から34.4%と、わずかに低下する結果となりました。

次に、誤用である「溜飲を晴らす」の使用率推移について触れていきましょう。

平成19年の誤用率は、どの年代でもおおよそ二割程度で、20代の16.9%が最も低く、最も高いのは50代の31.7%でした。

平成29年の誤用率は、19年と比べて、50代を除いた全ての年代で増加する結果となりました。

特に10代、20代の増加の度合いは大きく、それぞれ26.6%、14.4%も高くなっていました。

全年代の誤用率の平均は、25.6%から35.3%と、10%近くも大きく増加してました。

正答率の低下に誤用率の増加も相まって、10年間の間で、誤用である「溜飲を晴らす」が一層広ま ってしまった、と考えることができるでしょう。

一度誤った言葉を覚えてしまうと、「それ、誤用だよ!」と正してくれる人や、そのような機会がない限り、誤用は直らないでしょう。

この機会を利用して、ぜひ誤用を改めてくださいね。

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