「ぞっとしない」の正しい意味は?

する? しない?

「ぞっとしない」の正しい意味は? オマケ漫画あります

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(結論)

「ぞっとしない」は「面白くない」「あまり感心しない」という意味。

「恐ろしくない」という意味ではない。

「ぞっとしない」は「ぞっとする」の否定語?

皆さんは、「ぞっとする」という言葉を使ったことがあるでしょうか?

きっと、使ったことがある人の大多数が「ぞっとする」の言葉は「恐ろしさに身震いする」だと理解し、正しく使えているのでしょう。

だからこそ、「ぞっとしない」の意味を取り違えてしまうのだと思います。

どういうことって?

それでは、「ぞっと」と「ぞっとしない」という言葉の意味をそれぞれ確認してみましょう。

ぞっ‐と

[副](スル)寒さや恐怖などのために、また、強い感動を受けて、からだが震え上がるさま。「ぞっと寒気をおぼえる」「今地震が来たらと思うとぞっとする」「ぞっとするほど美しい顔立ち」

デジタル大辞泉(小学館)

goo辞書より引用

ぞっとし◦ない

おもしろくない。あまり感心しない。「引出物にするには―◦ない品だ」

デジタル大辞泉(小学館)

goo辞書より引用

辞書から、「ぞっと」には、寒さや恐怖のために身震いする、という意味と、強い感動によって身震いする、という意味の二つがあると分かります。

「ぞっとする」は前者の意味を汲んだもので、「恐ろしさに身震いする」という意味で使われています。

一方で、「ぞっとしない」は後者の意味を汲んだもので、「強い感動によって身震いする」(ぞっと)ことがないのであるから、すなわち「強い感動によって身震いすることがない」=「面白くない」という意味になるのです。

「ぞっとしない」は「恐ろしく感じる」という意味の「ぞっとする」の否定語ではなく、「強い感動によって身震いする」という意味の「ぞっと」の否定語だと捉えることができるでしょう。

すこし話がややこしくなりましたが、「ぞっとしない」の正しい意味は「面白くない」「あまり感心しない」であって、あくまでも「恐ろしくない」という意味ではないということを押さえておきましょう。

若い世代での誤用が多発

文化庁が平成18年度に16歳以上を対象に行った「国語に関する世論調査」で、「ぞっとしない」の意味に関する調査が行われました。

10代、20代、30代では、誤った意味の「恐ろしくない」と答えた割合は7割を超えており、正しい「面白くない」という意味を答えた人の割合をはるかに超える結果となりました。

40代以降でも、4割から5割の人が「ぞっとしない」という意味を誤認しており、全ての年代で誤認している人の割合が正しく使っている人の割合を超えることとなりました。

若い世代での誤用が目立ちますが、これは言葉の変化や知識の多少の影響以上に、「ぞっとする」の意味の直感的な理解しやすさが関わっているのではないでしょうか。

次項で詳しく見てみましょう。

「ぞっと」を擬態語として見てみると

特に若い世代での誤用が目立つように感じますが、「ぞっとする」という言葉がある以上、単純に「ぞっとしない」はその否定語だと考えてしまって誤用してしまうのも無理はありません。

「恐ろしく感じる」という意味の「ぞっとする」の「ぞっと」は、恐ろしさで身の毛がよだつ様や鳥肌が立つ様を擬態語として表現した言葉のように感じることができるでしょう。

恐ろしさを表現するよく知られた擬態語には「ぞわり」「ぞくり」なども挙げられます。

ホラー映画やホラーバラエティ番組の告知文句でこのような擬態語をよく聞きますよね。

ですから、「ぞっとする」の「恐ろしい」という意味は直感的に理解しやすく感じるのではないでしょうか。

そのイメージが強いからか、「ぞっとしない」の意味を問われると、「ぞっとする」の否定語だと考え「恐ろしくない」と答えてしまうのでしょう。

前項でも触れたとおり、「ぞっとしない」は「面白くない」「あまり感心しない」という意味ですし、使用例は少ないように感じますが「ぞっと」「ぞわり」「ぞくり」といった擬態語は感動によって鳥肌が立つ様子も表現することができます。

使う前に一度踏みとどまり、正しい意味かどうか確認してみてくださいね。

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